過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群とは、腹痛・便秘・下痢・おならといった不快な症状が長期にわたって続いている一方で、検便や大腸カメラ検査では異常が見つからない病気です。
ひどくなると、出社や登校、外出が困難になり、QOLを大きく低下させることがあります。
はっきりとした原因は分かっていませんが、適切な治療によって日常生活における支障を軽減することが可能です。
過敏性腸症候群の症状チェック
以下のような症状がある場合には、過敏性腸症候群を疑います。
- お腹の調子が数週間にわたって良くない
- 腹痛、便秘、下痢が続いている
- 排便によって一時的に症状が和らぐ
- 排便をしても、便が残っている気がする
- 排便の回数が日によって大きく異なる
- 突然の腹痛、下痢が心配で外出に不安がある
- おならがよく出る
過敏性腸症候群のタイプは大きく4種類
過敏性腸症候群は、以下のように大きく4つのタイプに分けられます。
ガス型
おならがよく出るタイプです。
悪化すると、無意識のままおならが出てしまうこともあります。
不安型
下痢、便秘の症状が、数日間ごとに交互に現れます。
また、腹痛を伴います。
慢性下痢型
ちょっとした不安やストレスから、主に下痢症状をきたします。
分泌型
強い腹痛ののち、大量の粘液を排泄するタイプです。
過敏性腸症候群になる原因はストレスが関係?
過敏性腸症候群の原因は、未だはっきりと分かっていません。 しかしながら、ストレス、睡眠不足、不規則な生活リズム、免疫異常などが発症に影響しているとの指摘があります。 中でもストレスは、過敏性腸症候群との関連が強く疑われます。
腸と脳の関係(脳腸相関)
脳がなんらかの精神的ストレスを感じると、神経管を通してその信号を腸へと伝えます。その反応として、膨満感や腹痛、便通異常、おならなどの症状が出ます。するとこれらの腹部の不快感は、また脳にとってストレスとなり、新たな信号を腸へと伝えます。 過敏性腸症候群では、上記のよう悪循環が起こっているものと考えられます。
腸内の「セロトニン」
脳がストレスを感じてその信号を腸へと伝えると、腸粘膜からはセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。 ストレスが引き金となる症状は、このセロトニンが関与しているものと思われます。
過敏性腸症候群の検査・診断方法
問診では、症状の種類や自覚した時期、生活習慣、既往歴などをお伺いします。 その上で、血液検査、尿検査、便潜血検査を、また必要に応じて大腸カメラ検査も行います。
過敏性腸症候群と似た症状を持つ疾患の1つに、大腸がんがあります。これら重篤な病気との鑑別のためにも、大腸カメラ検査は非常に有用です。
過敏性腸症候群の治療
問診では、症状の種類や自覚した時期、生活習慣、既往歴などをお伺いします。 その上で、血液検査、尿検査、便潜血検査を、また必要に応じて大腸カメラ検査も行います。 過敏性腸症候群と似た症状を持つ疾患の1つに、大腸がんがあります。これら重篤な病気との鑑別のためにも、大腸カメラ検査は非常に有用です。
生活習慣の改善
食事療法、運動療法についての指導を行います。
食事療法
栄養バランスを整え、食物繊維は意識的に摂取しましょう。乳酸菌も、腸内環境を整え、症状を改善することが期待できます。 なお、特に下痢症状のある場合には、冷たい食べ物・飲み物はできるだけ避けましょう。水やお茶も、常温で飲む習慣を身につけることをおすすめします。 また、飲み過ぎ、脂っこいものの摂り過ぎ、刺激物は、症状の悪化を招くことがあるため控えます。
運動療法
好きなスポーツ、運動を習慣化しましょう。楽しめる、続けられるものを選ぶことが大切です。 通勤の際に1つ手前の駅で降りて散歩のつもりで楽しむといったことも、運動療法の一環となります。 運動は、腸の働きの正常化の促進が期待できます。また、過敏性腸症候群との関係が指摘されるストレスの軽減にも有効です。
薬物療法
腸内のセロトニンの作用を抑える薬、便の水分を調整する薬、蠕動運動をコントロールする薬、便をやわらかくする薬、腸の異常な運動を抑制する薬などを、症状に合わせて処方します。
薬にも、合う・合わないがあります。経過を観察しながら、薬の種類を変更するなどして、患者様お一人おひとりに合った治療ができるよう努めて参ります。